第六十一段 うつろふのいち
鳥専門の病院というのは大変めずらしいそうで、行くといつもとても混み合っている。
そしてそこに鳥を連れてくる人達は、
みんなバッグに鳥を入れ、人によっては週に何度も遠方から通い、
2時間も3時間も辛抱強く順番を待っている、真面目な人ばかりだ。
病気、ということもあるだろうし、鳥が緊張している、ということもあるだろう、
決して広くはない待合室は、普通の動物病院とは違い、しんと静まりかえっているときが多い。
そこに乱入するお気楽な鳥・梅蔵。
そもそも「緊張」などという言葉がハナから辞書にないので、
病院だろうが他人の家だろうがいつもエンジン全開でプライベートを暴露しまくってくれる。
これがまた、私に似て機関銃トークなんである。
これが普段鳥に接していない人なら何を言っているのか分からないことが多いのだが、
鳥飼の人達は「鳥周波数」に耳が慣れているので、聞き取れてしまう。
深刻な顔でうつむいていた人達も、ガマンできずに笑いが漏れてしまうのだ。
梅蔵の話す内容が内容だけにむちゃくちゃ恥ずかしいのだが、
病は気からというからお役に立てれば本望だ。(ということにしておこう。)
しかし、もうちょっと言葉を選んでくれないかなあ。
ああ、梅蔵の口に戸が立てられない…。
まあ、私に似たんだけどさ…。